べたれば

better late than never→略してべたれば。5年間引きこもった末にようやく社会復帰した発達障害(ADHD)持ち。「遅くても何もやらないよりマシ」をモットーに、社会復帰までの経緯や興味関心、今考えていることなどを書いていきます。

ベンチに佇み読む本と、そこに流れる時間を慈しむ

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今週のお題に初めて乗っかってみようと思います。

今週のお題は「読書の秋」。

 

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ぐわぐわ団さんが焚書坑儒について書いていたんだけれど、インターネットは焚書坑儒の傾向にあるのではないかと思う。
僕のブログだって実用的な情報を意識して書いた記事の方が、アクセスは圧倒的に多いのだから。(本当に実用的かは別として)
最近はそういう記事をあまり書かなくなったので、このブログのPVはゆっくりとではあるけれど、確実に落ちている。火のついた飛行船がもくもくと煙を吐き出しながら落ちていくような感じで。

それにも懲りず、今日も「非実用的」な記事を書きます。

 

今、何をしている時が一番幸せかと問われたら、間違いなく本を読んでいる時だと答える。
それだけ僕にとって読書とは大切なものである。

黙々と文字を追っているだけで、日々の喧騒を忘れさせてくれ、時間の流れをとても遅いものにしてくれる。
そのために読むものとしては、小説が群を抜いて良い。

 

職場の近くの広場の柱——パルテノンほどの荘厳さはないけれど——にもたれて、冬の始まりを告げるべく低い位置へと下りてきた太陽が注ぐ優しい日差しに包まれながら一人黙々と文字を追う。
傍らに紙カップに入った暖かいコーヒーを携えて。

BGMは、遠くの方から聞こえてくる行き交う車の音、幼稚園を終えた子供たちのはしゃぐ声、その母親たちの井戸端会議、餌を追い求めて飛び回る鳥たちのさえずりなどだ。

このひと時がとても幸せだし、心から愛している。
すり減った神経に栄養を与えてくれる。
このひと時を味わいたいがために職場へ赴いていると言っても、決して過言ではない。

雨の日はこれができないから少しだけ憂鬱な気持ちになる。
一人になれる場所がないからだ。
人口密度の高い場所に身を置いて感じる孤独ほど苦痛なこともそうはない。
別段、雨が嫌いということでもない。
窓を打つ雨音に耳を傾けながら本を読むということも、また一興だ。
雨の日にそれができる場所が今の職場にないというのが、わりに残念というだけであって。

 

近頃ドナ・タートの『黙約』(原題:The Secret History)を日本語で読み終えたので、今はその原書を読んでいる。
この本を手に取るきっかけは、僕が敬愛してやまない村上春樹がドナ・タートのことを勧めていたことだ。

一口に言ってしまうと、殺人ミステリーということになるのだろうけど、いわゆるミステリーとは違い、より文学的な高尚さを孕んだ作品であり、著者が非常に高い知識と教養を持ち合わせているのだということが、随所にちりばめられたギリシア文化に対する造詣の深さからも見て取れる。

教養のない僕にとっては、日本語で読んでいても結構難しかったのだけれど、原書には作中に出てくるギリシア語に対する注釈もなく、登場する哲学者たち(さすがにプラトンやアリストテレスくらいはわかる)などの固有名詞の読み方が皆目見当もつかなかったりするので、理解するには日本語以上に苦心惨憺する必要がある。(そもそも何を読むにしたって、英語の方がわかりやすいと感じられるような語学力は持ち合わせていないのだけれど)

それでも文字を追いかけるというだけで、とても幸せな気分になれる。
例えその意味がわからなかったとしても。そこに存在する、時の流れが愛おしい。

 

今日は午前中に洗濯を終えて、昼食を食べに行くついでに近くの公園まで散歩に行った。
『The Secret History』を小脇に抱えて並木道を歩く。
池のほとりにあるベンチに腰かけて本を開き、ゆっくりとページを繰る。
頬をくすぐる11月の冷たい風、その冷たさを和らげる暖かな日差し。
アンダーアーマーのスポーツウェアに身を包んで走り去る人、アルプスの山々を連想させる大きなセントバーナード——世の中の全てを許してくれそうな寛大な雰囲気を携えた——が2匹、その彼らを連れたいかにも所得の高そうな夫婦、草原を無邪気に走り回る子供たち、池を横切る鴨の行方を熱心に追いかける老夫婦、そういったのどかな風景を写真に収めようとレンズを光らせる青年。

こういった牧歌的な雰囲気の中で本が読めるという幸福に、ただただ感謝するほかない。

一時間半ほどそこに座って本を読んで、近くのラーメン屋でねぎラーメンをすすって帰った。シャキシャキとした白髪ねぎの食感と、辛めに味付けされたザーサイの歯ごたえが絶品の一品。
空腹が満たされると睡魔が一気に襲ってきた。

 

家に着き、30分ほどの短い昼寝をするつもりが、夕方の6時ごろまで眠ってしまった。
それでもそんな一日を悔いたりはしない。
そういう時間が人生には必要なのである。

そうしてまた戦場へと赴くべく英気を養うのだ。

 

小説は「実用的」ではないかも知れないけれど、少なくとも僕にとっては人生の大切なパートナーだ。実用性や効率ばかりを求めて生きていくことは堅く息苦しく、心の豊かさを奪っていく。そういったものごとや思想から、少しでも距離を取ってくれる小説たちをこれからも愛し、読み続けていきたいと思う。

 

黙約(上) (新潮文庫)

黙約(上) (新潮文庫)

 
黙約(下) (新潮文庫)

黙約(下) (新潮文庫)

 
The Secret History

The Secret History

 

 

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